大型免許をとりたい人
教習所に行くのは高いから、一発試験で頑張りたい。経験者から合格するためのアドバイスが欲しいです。
そんな悩みにお答えします。
この記事を書いているぼくは、現役の教習所教官です。
大型免許の教習や検定も担当しているので、試験官の立場を理解している人間です。
一発試験は、「運転が上手」だけだと合格できません。
試験にはたくさんの課題があり、攻略法を知らないと減点されるからです。
この記事を読むことで、大型免許の一発試験に合格する方法がわかります。
ぜひ、最後までお付き合いください。
【教官が教える】大型免許を一発試験で合格する方法【仮免試験編】
大型免許を一発試験で合格するためには、2つのポイントがあります。
- 通常走行が「安全+円滑」であること
- 試験課題のルールを把握してクリアすること
これらになります。
通常走行のポイントに関しては、別記事で解説しているので参考にどうぞ。
大型免許の場内試験では、以下の6つが試験課題。
- 指示速度
- S字コース
- 路端停車
- 隘路(あいろ)
- 坂道発進
- 発着点駐車
通常走行に加え、これらの試験課題をクリアすることで試験に合格することができます。
大型免許の仮免試験(試験場内の運転試験)では合格ラインが60点以上。
課題に関しては失敗したら即失格になるものもあるので、しっかりと課題の内容を確認していきましょう。
1.【指示速度】スピードをキープする課題
指示速度とは、出すべき速度が指示されている試験課題です。大体の試験場では40km/hをキープするように指示されています。
速すぎても遅すぎてもダメなのよ!
指示速度における減点事項
- 速度オーバー ⇒ 20点減点
- 速度足りない ⇒ 10点減点
これらが主な減点項目。
キッチリと速度キープすることが求められているってわけですね。
メーターをガン見するのもNG。車体のふらつき具合で10~20点の減点があります。
とはいえ、日頃から運転に慣れている人であれば大して難しい課題ではありません。
2.【S字コース】車両間隔・速度調節が大切
S字コースは縁石とポールで作られています。
ポールへの接触は「即失格」となるので、絶対に触れないように!
S字コースにおける減点項目
- 縁石への接触 ⇒ 5点減点
- 縁石乗り上げ ⇒ 20点減点
- 切り返し ⇒ 5点減点
- 確認不足 ⇒ 10点減点
こんなところですね。
「縁石にタイヤがかすった」であれば、5点減点で済みます。
「縁石にタイヤが浮き上がる乗り上げをした」場合には、すぐに止まって元の位置まで戻れば20点減点で済みます。
タイヤが乗り上げたのにそのまま進んだ場合には、試験失格となるので注意してください。
バックで戻る場合には、必ず「左右両後ろを目視確認」してくださいね!
S字コースを上手に通過するコツ
- S字の入り口は直角に入る
- S字内はカーブに対して外側のミラーを沿わせる
- S字の出口までにギリギリまで外側に寄せておく
- 内側の後輪が縁石から離れない通行位置を意識する
それぞれ詳しく解説します。
S字の入り口は直角に入ろう
大型トラックの内輪差は乗用車に比べて2~3倍大きくなります。
内輪差とは、クルマが曲がるときに「前輪と後輪が通過する位置のズレ」のことです。
免許センターで採用されている大型車の内輪差は、最大約2.5mくらいだよ!
ただ、各都道府県の免許センターごとに採用されている車種が統一されていません。
大体2.5mって思っといてください。
S字の入り口は内輪差で後輪を引っ掛けやすいので、直角に誘導すると十分に余裕をもって入り口を通過することが出来ます。
S字内はカーブに対して外側のミラーを沿わせる
S字内に進入したら、できるだけ早い段階でカーブに対して外側に車両を寄せておきましょう!
S字内でも内輪差の影響を受けます。
寄せが遅れると、外側も内側もギリギリになっちゃいます!
こうなるとS字は通過できても、出口が一発で出られなくなることがほとんど。
一発で出られなければ、切り返しの減点をとられてしまいます。
入口の誘導次第で、出口の出やすさが決まる!
S字の出口までにギリギリまで外側に寄せておく
S字の課題は、入口よりも出口のほうが乗り上げやすいです!
なので、出口ではギリギリまで外側に寄せておくことが超重要!
出口が右折なら、左側に。
出口が左折なら、右側に。
ぶっちゃけ、S字の課題で一番苦労するのは出口です。
内側の後輪が縁石から離れない軌道を意識する
出口を曲がるときは、後輪の通行位置をしっかりとミラーでチェックしましょう!
曲がった先の道幅は限られているので、大回りになるとコースアウトします。
上図のように、縁石の頂点から後半にかけて、後輪を沿わせるように意識しましょう!
S字内で詰まった場合はバック!
S字内であれば、ぶつかりそうなら1回の切り返し(バック)は減点になりません。
切り返し回数と減点は次のとおり。
- 1回目 ⇒ 減点無し
- 2回目 ⇒ 5点減点
- 3回目 ⇒ さらに5点減点
- 4回目 ⇒ 試験失格
切り返しは1回以内で通過できるように、ムダ打ちはしないほうがいいですよ!
コース内の縁石に乗り上げたのに、一定距離止まらない場合は「即失格」となります。
大型車の場合、「乗り上げたことに気付かない」っていう人もわりといるんです。
教習や検定を見ていると、そういう人は大体スピードが出過ぎています。
乗り上げたことに気付けるような「速度づくり」が大切ですね!
ちなみに、S字のような課題じゃないところでの切り返しは1回目から減点の対象となります。
3.【路端停車】発進時の確認はしっかりと
路端停車は、分かりやすく言うと「路駐」の課題です。
狙った場所に、スムーズに駐車できるかを試されるよ!
駐車のポイントは3つあります。
- 指定された場所まで止まらず進む
- 路端(道の端っこ)から30cm未満まで寄せる
- 指定された目標物の前後30cm以内にバンパーを合わせる
左30cm未満の寄せは、けっこうギリギリです。
進入角度をなるべくつけないのがコツです!
また、30cm以内のバンパー合わせも、通り過ぎたらバックができません。
路端停車も、S字と同様に「速度づくり」が大切ですね!
基準通りに合わせられたら、「停車の措置」をとってください。
停車の措置の手順
- サイドブレーキ
- ギアはニュートラル
- ブレーキペダルは踏んだまま
- 「終わりました」という完了申告
停車の措置ができていなくても、減点になることはありません。
しかし試験官への印象は悪くなるかも…。
試験官も人間だからね、印象が悪いと難癖つけて落としてくるよ!
路端停車からの発進は「確認」をしっかりと!
路端停車の課題はこれで終わりではありません。
停車した場所から、安全に発進しなければなりません。
発進する際に確認すべきポイントは3つ。
- 前方の障害物に接触しないか
- 左後方の障害物に接触しないか
- ほかの試験車両の妨害にならないか
確認は1カ所抜けるごとに、10点減点となります。
前方の障害物を避けるためにハンドルを回しすぎると、リアオーバーハングによる接触が起こります。
リアオーバーハングとは、曲がるほうとは逆方向にトラックのアオリ部分が振り出してしまう現象のことです。
結論からいうと、ハンドル1回転で出ていけばOKですよ!
路端停車の左側ポールまでは30cmの余裕がある
上図のとおりで、路端の30cm外側にポールが設置されているんですよね。
つまり、路端ギリギリに停車したとしても30cmは余裕があるってこと!
試験車両のオーバーハングは、最大で約90cm振り出すと覚えておきましょう。
そして、大型車両のハンドルは約3回転します。
つまり、オーバーハングの振り出し幅は次のようになります。
- ハンドル3回転で90cm
- ハンドル1回転なら30cm
ハンドル1回転までであれば、絶対にリアオーバーハングがぶつかることはありません。
ハンドル1回転で、前方の障害物も余裕で避けられます。
路端停車からの発進は、「ハンドル1回転」その場で切ってから動き出そう!
1回転切って動き出したら、周囲の確認をしっかり忘れずに!
もう一度、確認ヶ所をおさらいしましょう。
- 前方の障害物に接触しないか
- 左後方の障害物に接触しないか
- ほかの試験車両の妨害にならないか
確認は1カ所抜けるごとに、10点減点となりますからね。
路端停車から発進時の切り返しについて
発進したものの障害物が避けられなかったり、オーバーハングがぶつかりそうになった場合には戻らなければならなりません。
その際にバックすることができる限界位置を知っておく必要があります。
それがこちらの画像のとおり。
停車時に合わせた目標物よりも、バンパーが後方に下がった時点で失格となります。
その範囲内で修正して脱出しなければならないので、かなり難易度は高いです。
試験でこの状態に陥ったら、わりと詰んでます…。こうならないためにも、「停車までの誘導」が最も大切!
基準からはみ出ないギリギリで停車できれば、発進がグンとラクになりますよ!
切り返し回数と減点
- 1回目 ⇒ 減点無し
- 2回目 ⇒ 5点減点
- 3回目 ⇒ さらに5点減点
- 4回目 ⇒ 試験失格
4.【隘路(あいろ)】後輪の誘導をしっかりと意識
隘路とは、指定された枠内に車両の両端とバンパー部分を収める課題となります。
隘路の条件に、「止まることなく90度向きを変える」ってのがあるので、これまた速度づくりをしっかりと意識しましょう!
隘路(あいろ)の手順
まず、走行線(画像では赤線)を踏まないように真っ直ぐ進入します。
左折で収める場合と右折で収める場合がありますが、いずれも進入していく際の線(画像では赤線)や縁石は踏んだ時点で失格になります。
ハンドルを切り始めるタイミングは、おおよそ手前のラインと前輪が並んだくらいか少し超えたくらいがベスト。
その後は外側の後輪をラインに寄せていくように誘導すると、スムーズに収めることが出来ます。
内側のミラーばっかり見ていると、車両全体のサイズ感がつかめずに失敗します。
大型車の長さを理解していない人に多い失敗例であり、内側を意識しても修正は上手にできません。
それよりも外側を寄せるように誘導したほうが、結果的に内側も枠内に収まっていきます。
左右のミラーでバランスよく確認しつつ、外側の意識を高めに持っておきましょう。
よく間違えやすいのが、バンパーの収める位置です
前方にラインが引いてあるので、そのラインにバンパーを合わせようとしてしまう人が結構多いです。
しかしバンパーを収める位置は、両端のライン先端の内側になるので間違えないようにしてください!
隘路の切り返し範囲について
前方に引かれているラインが、切り返しの限界位置となります。
そのラインをバンパーが超えた時点で失格となるので注意してください。
試験場によっては、前方のラインにバンパーが乗った時点で失格になるところもあります。
バック時は、両端のライン末端を最後輪の接地面が超えた時点で失格となります。
かんたんに言うと、駐車枠から後輪が後ろに”はみ出したら失格”って覚えておこう!
左右を収めることに集中するあまり、後方の限界位置を超えてしまうケースもあります。
しっかりと注意を分散させておきましょう。
切り返し回数と減点
- 1回目 ⇒ 減点無し
- 2回目 ⇒ 5点減点
- 3回目 ⇒ さらに5点減点
- 4回目 ⇒ 試験失格
5.【坂道発進】アクセルはゼロでOK
坂道発進は、下がらないように発進することが目的です。
大型トラックの場合エンジンの力が強いので、アクセルを踏まなくても十分にのぼっていくことができます。
車両が振動するくらいの半クラッチを作れたらハンドブレーキを下ろすだけでOK!
坂道発進の具体的な手順
- ハンドブレーキを引く
- フットブレーキを離す
- 車両が振動する程度の半クラッチをキープ
- ハンドブレーキをゆっくり解除する
大型の坂道発進はそれほど難しい課題ではないです。
手順を頭にいれて、落ち着いてやればOKです。
坂道発進での主な減点・失格事項
停止した地点から、前ではなく後ろに進むことを逆行と言います。
- 逆行が30cm未満 ⇒ 減点無し
- 逆行が30cm~50cm未満 ⇒ 10点減点
- 逆行が50cm~1m未満 ⇒ 20点減点
- 逆行が1m以上 ⇒ 試験失格
下がった距離は、「合計距離」となります。
例えば、
- 1回目は30cm下がった
- 2回目は80cm下がった
この場合、合計で1.1mとなるので失格となるわけです。
同じ場所で「エンスト4回」も失格となります
坂道発進に限ったことではありません。
ただ、とくに坂道はエンストが起こりやすいので、慎重に半クラッチを作りましょう!
6.【発着点駐車】基本は路端停車と同じ
ゴール地点での停め方は、基本的に路端停車と同じです。
停め方の基準を復習しておきましょう。
発着点での停め方
- 路端(道の端っこ)から30cm未満まで寄せる
- 指定された目標物の前後30cm以内にバンパーを合わせる
ただし、発着点の駐車は「行き過ぎたからバックする」ということはNGです。
一発勝負だから慎重に!
基準通りに停められたら、クルマから降りるところまでが採点範囲です。
車両から降りるまでの手順
- サイドブレーキ
- ギアはニュートラル
- ウインカーをもどす
- エンジンキーをオフにする
- ギアを「2」または「R」に入れる
- クラッチペダル、ブレーキペダルを離す
- 「終わりました」の終了申告
- 右後方を直接確認してからクルマから降りる
手順に悩まないように、普段の運転から練習しておくといいですね。
発着点での減点項目
- 左に寄れていない ⇒ 5点減点
- 前後30cm以上ズレる ⇒ 5点減点
- エンジンを切らない ⇒ 5点減点
- ギアが「N」のまま ⇒ 5点減点
- 確認せずに降りる ⇒ 10点減点
塵も積もれば、検定失格です…。
大型免許を一発試験で合格するには「通常走行」も仕上げましょう
これまでに紹介した試験課題の攻略法を忠実に再現したとしても、試験に不合格となるケースがあります。
通常走行でも減点を多くとられてしまうポイントがあるからです。
免許試験は「あなたが免許取得後に安全運転をしてくれるか」を見定める試験です。
つまり、試験官としては以下のポイントを注意深く観察しているのです。
- イメージ通りに操作する技術があるか
- 交通ルールを正しく理解し、実行できているか
- 安全に対する気配りがしっかりとできているか
「技術」「知識」「安全意識」の3拍子がそろっている人を合格させたいってこと!
この記事では、「技術」に特化してお伝えしてきました。
「知識」「安全意識」については、当ブログで幅広く解説しています。
手始めに、こちらの記事からどうぞ。
というわけで以上です。
この記事が、参考になったなら幸いです。
皆様の合格を祈っています。
路上試験の課題内容を解説している記事はこちら。
はじめまして。私は、52歳で現在大型一種免許の教習を受けているものです。来週、第一段階の検定なのですが、どうも、ギヤチェンジが苦手です。2速に入れたつもりが、バックに入ったり、3速に入れたつもりが、5速に入ったりと…
何か、コツみたいなものはありますか?
のぶさん、はじめまして!
ギアチェンジの操作ミスは「力の入り過ぎ」が原因であることがほとんどです。
そのためシフトレバーを握らず、「手のひらで操作する」のをおすすめしています。
たとえば2速3速に入れる場合、手のひらを外側に向けて軽い力で左に押し込みます。
力が入り過ぎるとバックに入っちゃうので、気を付けてください!
文章だけで伝わりにくいかもしれませんが、検定合格できることを応援しています!